2017年4月30日日曜日

住吉川

  住吉川

陽が翳り
風が出てきた。
ものみな黒く隈どられた早春の地平に
煙が一すぢ横になびいてゐる。
しんとして迫る夕暮の気配の中に
ひたひたとゆたかにあげ潮は運河の河に満ち溢れてゐる。
三角州の葦原にぶちあげられた骸炭の山の上に
汚ない子供たちがちらばつてゐた。
信じることができないほど永い永い時間を
お互ひに一言も口を利かないで。
山の中にまだ火になるやつがある。


「住吉川」=写真=は、神戸市の南東部を流れる川で、六甲山(931m)を源流に、同市灘区・東灘区を南へと流れ、大阪湾に注ぎます。延長8km。もろい花崗岩からなる六甲山は、山崩れや地滑りを伴う水害が頻発してきたため、上流には多くの砂防ダムが築かれています。

山腹は扇状地をなし、JR東海道本線は天井川の堤防下をトンネルで抜けています。一帯はいまは高級住宅地になっていて、下流西岸の東灘区住吉東町には谷崎潤一郎の旧居「倚松庵(いしょうあん)」があります。

「骸炭」はコークスのこと。粘結炭を約 1000℃で乾留して、その揮発分を石炭ガスとして放出したあとに残る固体燃料です。灰分を含んだ多孔質の炭素質。製鉄用コークスはたいてい製鉄会社が自家生産し、溶鉱炉で鉱石の溶解に必要な熱を供給し、鉱石の還元に必要な一酸化炭素をつくります。

*「山の中にまだ火になるやつがある」は「火になるやつ」が眼目ではないであろう。つまり偶意ありととるべきではないだろう。小野が云おうとしたのは、「まだ火になる(かもしれぬ)やつ」を「一言も口を利かないで」拾っている子供たちとその暮らし、そして、それを包みこむものにあるはずだ。《安》

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