2017年5月14日日曜日

北西の葦原

   北西の葦原

そんなにぽんぽをだして
風ひかない?
兄いちやんはどこへいつたの?
あ、あんなところだ。
たくさん蜻蛉捕れたね。
もう指に挟みきれないね。
兄ちやんまだ追つかけてるよ。
をぢさんはこのみちをまつすぐにいつてみよう。
まつすぐにいつたらどこへ出るだらうな。
をぢさんいつてみるんだ。
をぢさんはじめてきて
こことても好きになつた。
きみは毎日兄ちやんと蜻蛉を捕りにくるの?
いいね。毎日こられていいね。
きみのお家はきつとあの辺だとをぢさん思ふ。
近いんだもの
裸だつてかまはないや。
をぢさんは遠いから
洋服を着て 靴をはいて
ちやんとして来なければならない。
とつても遠いんだよ。
きみの知らない遠い遠いところからをぢさんやつて来たんだ。
さあ、どこへ出られつかな。
海かな。
をぢさんいつてみる。
いいところだといいな。


大阪府高槻市鵜殿から上牧に広がる河川敷には、淀川流域で最大級のヨシ原があります。鵜殿のヨシ原です。

長さ2.5km、広さ75ha(甲子園球場18個分)にも及ぶヨシ原には植物が生い茂り、「蜻蛉」をはじめ、鳥や昆虫の楽園となっています。

1930年に枚方大橋が開通するまでは、対岸との交通は渡し舟が唯一の交通機関で、鵜殿には渡し場がありました。

鵜殿に生えるヨシは、高さが3mほどの大形のヨシで太く弾力性があり、古くから雅楽の篳篥(ひちりき)の蘆舌(リードに相当)として使用され、1945年ごろまでは、毎年100本ずつ宮内庁に献上されていたとか。

935年、紀貫之が土佐から帰京するおり「うどの(鵜殿)といふところにとまる」と『土佐日記』に記され、谷崎潤一郎の『蘆刈』の舞台が鵜殿のヨシ原とも言われています。

*『大阪』の「骸炭山」に似て、葦原へやってきた男の言葉でできているが、子供に呼びかけている言葉の具体的な内容にもかかわらず、どこか異った感じを持っている。それはたとえば、「きみの知らない遠い遠いところからをぢさんやつて来たんだ」とか「いいところだといいな」とかの詩句に読みとれる。小野の「葦の地方」は明らかに変質している。《安》

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