2017年5月9日火曜日

風景(六)

   風景(六)

風は荒く
地は凍つてゐる。
引込線の道床は赤錆び
ところどころに
まだ莎草(はますげ)の類が根を張つてゐる。
今日も海の方に
あのへりだけが耿々と耀いてゐる雲があつていかにも寒さうだ。
線路にはタンク型の煤ぼけた貨車が数珠つながりになつて停止してゐる。
悉く濃硫酸や二硫化炭素液である。


「莎草」(ハマスゲ)=写真、wiki=は、カヤツリグサ科の多年草で、コウブシまたはクグともいいます。日本では関東地方以西の本州、四国、九州の海岸の砂浜、河原や日当りのよい原野に生息します。細い地下茎が横に長く這い、その先端に塊茎を生じます。稈は塊茎から直立し、高さ 20~30cm、基部に数枚の葉を叢生します。葉は線形で光沢のある深緑色。夏から秋にかけて茶褐色の花序を出します。塊茎からひげ根を焼いて取去り、乾燥させたものを香附子 (こうぶし) と呼んで、通経などの婦人薬として用いられます。

濃度の高い硫酸(質量パーセント濃度が約90%以上)を「濃硫酸」といいます。市販の濃硫酸は96〜98%程度のものが多く、おもに工業用品、医薬品、肥料、爆薬などの製造や、鉛蓄電池などの電解液に用いられます。国内最初の硫酸製造工場は、1872年5月、大阪市北区天満にある大阪造幣局に設置されました。貨幣に利用する金銀合金の分離精製、および円形の洗浄に用いるためです。

「二硫化炭素」は、炭素と硫黄の化合物。水分や揮発分を除いた木炭と硫黄を850~950℃で反応させて製造します。硫黄、白リン、ヨウ素、樟脳、樹脂、ゴム、油脂などのよい溶媒で、ビスコースレーヨン、四塩化炭素、ゴム加硫促進剤、農薬、キサントゲン酸塩の製造に用いられます。有毒で中毒症状をおこすことがあり、蒸気は空気と混合すると爆発しやすい性質があります。

*莎草(はますげ)と濃硫酸・二硫化炭素液の対置考えていたと小野は述べている。見据える視線の強さが作品の方向を明確に読者に指示している。

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