2017年7月24日月曜日

燈の帯

   燈の帯

暗い
夜の日本海を
ななめにつっきって
戦車をも呑める
巨大などてっぱらを持った
C124四発輸送機が
山陰石見の上空に近づいている。

真白に凍った
小窓をぬぐって
ゆくてを見れば
夜の日本列島はさながら燈(ともしび)の帯だという。
海岸線に沿って
ネオンの都会や、燈のかたまった村々が
夜光虫のような帯をなして
一面につらなっているというのだ。
海と陸との区別もつかぬ真暗な朝鮮の空をぬけて
舞いもどる日本の下界の明るさは
まるでそれはパラダイスだと。

なるほど
境空軍基地の照明燈は
高く煌々とかがやいている。
峰山の基地。岩国の基地。松ヶ崎浜の基地の灯(ひ)も明るい。
舞鶴のキャンプも明るい。
伊丹基地。小松基地。
京都。奈良。大阪のキャンプはさらに明るい。
まさにそれは楽園の灯だ。
岐阜のキャンプ。前橋のキャンプ。
相馬のキャンプ。尾島のキャンプ。朝霞のキャンプ。
御殿場、横須賀のキャンプ。
太田、館林の照明燈。
立川。横田。白井。厚木の滑走路。
全島いたるところの
火薬庫。弾薬庫。
造兵廠。兵器補給所。水槽。石炭貯蔵庫。
そしてキャンプ東京の光芒は
夜霧をまきこんで昼とあざむくばかりだ。

真暗な夜の日本海を
ななめにつっきって
今日も朝鮮からの帰休兵を満載した
C124四発大型輸送機が帰ってくる。
戦車をも呑める
二百人乗の巨大な軍用輸送機の爆音が
いま寝しずまった山陰石見の上空を通過する。

海岸線という海岸線。
都会という都会。
村落という村落。
夜の日本列島はかれらの燈の帯。
光の渦だ。


「C-124」=写真、wiki=は、アメリカ合衆国のダグラス社が開発した軍用輸送機。1947年から開発が進められ、1949年に初飛行。冷戦時代初期の戦略軍事輸送の主力でした。全長40m、最大離陸重量98t、乗員6人、最大速度520km/h。

主翼は低翼配置で、4基のレシプロエンジンが設置されています。大型のヘリコプターや戦車も搭載できる二層のキャビンデッキを持って大きな輸送力を備えたとともに、大きな観音開きの貨物ドアとリフトが設置され、迅速な輸送作戦も行われるようになっていました。

1950年5月に実戦配備され、全部で448機が生産されました。朝鮮戦争や、冷戦初期の世界各地に展開するアメリカ軍に物資を送り届けるのに活躍、ジェット軍用輸送機が導入されていたベトナム戦争でも一部では作戦に投入されました。

*「米軍輸送機から全島基地化した日本を俯瞰した」(小野)この作品は、小野が「民科」の夏期自由大学の巡回講師として山陰へ行ったときの浜田の町の記憶と結びついている。「これを書いているときわたしの脳裡に、浜田での『民科』の集りで会った何十人かの青年男女たちの姿が去来した」と小野は書いている。日本列島は燈の帯だという。光の渦だという。「かれら=米兵」にとってはだ。そして石見の町は、日本の町は、日本人の町は、寝しずまっているのだ。驚くべき視点から小野は日本の現実の姿を俯瞰している。《安》

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